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親愛なるオズのお嬢サマ方、うちの近くに、一軒の銭湯がある。最近の銭湯の 流行りどおりにここもクアハウス風に改装した。その直後からである。恐るべき 集団に襲撃され始めたのは。 以前ここに一度登場した、恐怖の秘密結社『踊る肝臓の会』を覚えておいでで あろうか。人生には何の益にもならない情報で、まったく紙とインクのムダで あるが、敢えてもう一度説明するなら「命をかけて、到酔性の液体を摂取する 集団」、早い話がアル中グループである。度重なる否定にもかかわらず、私も この構成員だとされている。 この人々のほとんどは定住場所を持たないがために、しばしば私の家に出没 する。ひとりが出現すると、アクマのような情報網によって、たちまち数人に 増殖する。そして、私が帰宅すると酔っていて、家を出る時やはり酔っている。 一日仕事を終えて帰ると、やはり酔っている。いったい、ここは誰の家？と私は 天を仰ぐのだ。 この人々が、酔いがピークに達すると、ゾロゾロとかの銭湯に出掛けるのだ。 最初に起こしたのは「温泉タマゴ事件」であった。銭湯に付設されたサウナの 温度計が90度を指しているのを見て、アルコールに浸された一人の頭脳が閃いた。 彼は、次に行くとき、生タマゴをタオルの下に隠して持ち込んだ。それだけなら いいのだが、こともあろうに、それを熱せられた石の上に置いたのである。ああ 書くも恐ろしい。タマゴは爆発し、石にこびりつき、サウナの中は石焼ビビンバ 状態となった。私は菓子折りを持って、謝りに行った。主人は「次、こういう ことがあると、こちらにも考えがある」と言った。 次が「便乗屁失敗事件」である。フロの一つに、気泡が出るジャグジーがある。 泥酔した一人が、そこにつかっていて、おならを催した。アルコールに浸された 頭で、彼は、ここなら気泡に紛れて誤魔化せると思ったに違いない。だが、その 結果は−−−ああ、書くも恐ろしい（編集部注・お願いだからお願いだから書か ないでね！）アルコールに浸された彼の肛門は、気体と固体を峻別できなかった のである。私は高級ブランデーを持って謝りに行った。主人は「もう一度こういう ことがあると、町内会に言って、あんたには出ていってもらう」と言った。 そして、先日である。私が帰宅すると−−−悪魔の集団がすっかり出来上がって いままさに銭湯へ繰り出すところであった。アルコールに脳を浸された人々は、 その日は露天風呂で遊んで下さった。「戦闘開始！」の号令と共に、ゴムの栓を 外しぶつけあう戦争ゴッコを始めたのである。そして、数分後にはそれは窓の 外に落下していった。 私の脳裏に「出ていってもらう」と言った主人の言葉が浮かんだ。咄嗟に私は 排水口を手で抑え、水が出るのを防いだ。ところがその直後「先出るね！」 悪魔の人々は、私を見捨てて出ていったのである。 体温が40度近くまで上昇して、半死半生の私が発見されたのは、銭湯の閉店後 であった。銭湯での戦闘はやめようね。（溜息） |
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